
はじめまして。コウノドリの舞台のような病院で助産師をしているちえみです。
わたしは日々いのちに向き合い、産声のないお産やお産を通していのちを全うした女性の存在、様々ないのちのかたち、家族の在り方を心と肌で感じて生きています。助産師のお志事が大好きです(助産師というお仕事についても発信する機会があれば嬉しいなと思っています)。「生きるってなんだろう」「いのちの意味ってなんだろう」「いのちを通して何を伝えたかったんだろう」そんな、いのちのことを考えることが大好きな助産師です。本当にコウノドリのようなドラマティックで神秘があふれる、貴重ないのちの物語に毎日関わらせていただき、感謝の気持ちしかありません。当たり前のことかもしれませんが、今自分が生きていること、そして大切な人のいのちがここにあること。それってものすごく幸せなことです。そんなことを毎日しみじみ感じながら、助産師として病院勤務をしながらプライベートな時間でいのちのことについて発信を行っています。

「立ち合い出産ができなくなって、すごくショックです・・・」
今日はそんな思いを感じている方に向けたお話です。
わたしの勤務先でも立ち合い分娩や面会に制限が出てきています。そしてその決定の裏で、わたしたち助産師もあれこれ思いを抱いています。「一生に一度のこと、出産という経験で立ち会いたいという希望を通してあげられないのはとても苦しい思いがある」「何かできることはないか?」「助産師が写真や動画で記録を残したらどうか」など。日々話し合う中で色々な思いがありました。
そんな時に記事を書くご縁をいただき、助産師のわたしがもしも今出産を控えている妊婦だとしたら、どんなお産をしたいかなと考え、そんな内容で記事を書きたいと思いました。これからお産を控えているみなさんに、新しい視点からいのちを迎える経験について考えていただくきっかけになれば嬉しく思います。

<出産でいちばん大切にしたいこと>
「立ち合い出産は絶対したほうがいいよ!」という意見を言う方もいらっしゃいますが、わたしは立ち合い出産については何がなんでもしたい、してほしいという思いは全くありません。パートナーと二人で、どんなお産にしたいか、いのちを迎えるという経験をどんなものにしていきたいか、お互いの思いを確認しあいながら話し合って決めたいと思います。
わたしは立ち合い出産をする、しないにしても、特に新しいいのちを迎えるという経験はパートナーやサポーターとじっくり味わい、「分かち合いたい」という思いが強いです。きっとそんな思いを持たれている方も多いのではないかと思います。そして、立ち合い出産を制限する世の流れの中で考えた事があります。それは「分かち合うことってどういうことなのか?」ということです。わたしは「自分と、相手を感じること」かなと思いました。大切な人がそばにいてくれたらそれはものすごく嬉しくて、安心するかもしれないけれども、分かち合う方法ってそれだけではないなとも思うのです。「相手の想いや存在を感じることができること。」それがわたしが妄想のお産に向けて一番大切にしたいことです。

<立ち合い出産がしたいけれど、できなくなってしまったときに、できることを考える>
立ち合い出産を希望する前提で、世の中の状況で立ち合いができなくなってしまった場合、リアルタイムでパートナーとお産の状況を共有したいなと思います。それは、わたしたちなりの「分かち合う」工夫です。オンラインでつないで、二人だけのライブ配信みたいな形でシェアできたらおもしろそうだなと思います。あくまでも医療スタッフの皆さんには負担をかけたり、ご迷惑をかけない範囲で、オンライン立ち合い出産をしてみたいです。ライブ配信用に使ったりするミニ三脚を持参したいと思っています(笑)。自分で自分の動画をとったり、そこに気を遣えている段階ではお産は進みませんし、そしていよいよ、という場面では動画のことなんて気にかけていられないと思います。そのため余裕が無くなっても人にお願いすることなく、映像を撮り続けられるためのミニ三脚です(助産師としてお産を担当するなかで、たまに撮影をお願いされることもあり、お手伝いすることもありますが、助産師側としては大切な機器を破損してしまわないかという心配や、病棟の状況によっては希望したときに撮影のお約束ができる保証ができない事情があったりします)。そして出産後は、うまれたら赤ちゃんも、そして画面越しのパートナーやサポーターも一緒に記念写真を撮りたいなあと思います。いつか子どもが大きくなったら、「あなたが生まれたときは世界が大変な状況だったけれど、オンラインで立ち合い出産して、みんなであなたのいのちが生まれる瞬間を応援してくれていたよ。心待ちにしていたよ。」と話してあげたいです。

わたしの妄想の世界にお付き合いいただきありがとうございました。
色々妄想しましたが、妄想のお産をイメージして言語化する過程で、別にこれが叶うか、叶わないかはあまり重要ではないなと思う気持ちも芽生えました。シンプルに、そんなことをじっくり自分で考えたり、パートナーやサポーターの方と妄想し合える時間がとても尊い時間なのではないかと思ったのです。今の世の状況でなければ、きっとこんなことは考えなかったかもしれません。
これから出産を控えているみなさんも、ぜひ、おひとりで、またパートナーやサポーターの方とそんな妄想の時間をたのしんでみてはいかがでしょうか?おなかの赤ちゃんもとても嬉しいと思います。そして赤ちゃんや、パートナー、サポーターの方とのさらに豊かな愛の循環が生まれるのではないかと思います。

立ち合い出産ができなくなり、ショックや不安を感じておられる方は沢山いらっしゃると思います。色々制限ばかり言う病院や医療者に対して「冷たい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。でもわたしたち助産師もとてもショックでつらいです。すばらしいいのちの経験を分かち合う機会を安心して提供したい思いはいつもあります。でも今の世の中の状況では立ち合い出産に「安心安全」が保障できなくなっている事実があります。
なんとか立ち合いができないかと、そこにエネルギーを注がれる方がいらっしゃること、その想いを否定するつもりはありません。でも限られた妊娠生活です。今の状況だからこそできること、そしてわくわくいのちを迎えることについて向き合うことにエネルギーを注ぎませんか?

最後に、「見えない不安の中だからこそ豊かなお産ができちゃうしつもん」を贈ります。
Q.あなたにとっての「立ち合い出産」って何でしょう?
Q.立ち合い出産ができなくなることは、なぜショックですか?
Q.新しくいのちを迎える経験でたいせつにしたいことはどんなことですか?
Q.たいせつなことをたいせつにするために、どんなことができますか?
みなさまのいのちが少しでも穏やかに、ホッと安心した気持ちで過ごせることを願っています。
今日もいのちにありがとう。
助産師ちえみ Blog
Photo by Akari Kuramoto/ every single day
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